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手の痛みを治す方法は、一つではありません。--優れた技術と、それを生かす判断力--

執筆者の写真: 山田哲生
山田哲生
4 時間前
読了時間: 4分


手が痛い。

指が曲がらない。

物を握ると痛む。

そんなとき、多くの方は「どんな治療を受ければよいのだろう」と考えると思います。

注射がよいのか。手術が必要なのか。それとも別の方法があるのか。

しかし、私は治療方法を最初に決めることはしません。

まず考えるのは、その手に、いったい何が起きているのかということです。

同じ病名がついていても、痛みの原因や傷んでいる組織、手の状態は人によって異なります。

ですから、同じ治療をすれば、誰でも同じように良くなるわけではありません。


優れた技術を、正しく使うということ

古代中国の思想家、孔子は『論語』の中で、次のように述べています。

「工、其の事を善くせんと欲すれば、必ず先ず其の器を利くす。」

よい仕事をするためには、まず道具を整えなければならない、という意味です。

私は、この言葉が医療にも通じると考えています。

医療技術は進歩し、かつては難しかった治療も可能になってきました。

高度な注入治療、組織修復を促す治療、再生医療、そして精密な手術。

こうした優れた治療技術を備えることは、医師にとって大きな力になります。

しかし、優れた道具を持っていることと、それを使いこなせることは同じではありません。

大切なのは、その手に何が起きているのかを見極め、どの治療技術を、いつ、どのように用いるべきかを判断することです。

優れた技術と、それを生かす判断力。

私は、その両方がそろって初めて、質の高い治療が実現すると考えています。


治療には、それぞれ役割があります

私は、手の痛みを治療するとき、大きく分けて四つの考え方を持っています。

一つ目は、ほどくこと。

神経や腱などの周囲で組織の動きが妨げられている場合、その状態を改善するための治療です。

二つ目は、修復すること。

傷んでいる部分に対して、必要な修復を行うという考え方です。

三つ目は、体が持っている修復の働きを助けること。

組織の状態に応じて、回復を促すことを目的とした治療を行います。

そして四つ目は、構造そのものを変えること。

今の構造では十分な改善が難しいと判断した場合、手術などによって状態を変えるという考え方です。

これらは、単に治療方法を並べたものではありません。

それぞれに異なる役割があり、必要に応じて組み合わせることもあります。

高度な治療技術や手術は、従来の方法では難しかった問題に対応できる、大きな可能性を持っています。

私は、そうした技術の価値を十分に生かすためにも、治療方法の選択が重要だと考えています。


治療方法を決める前に、診断がある

当院では、超音波などを用いて手の状態を確認し、痛みや動きに関係する問題を調べます。

そのうえで、私はその方に必要と考えられる治療を組み立てます。

一つの治療で十分な場合もあれば、異なる治療を順番に行う方がよい場合もあります。

また、治療を行ったあとには、手の状態がどのように変化したのかを改めて評価します。

最初の診断、必要な治療、そして再評価。

これらを一つの流れとして考えることが大切なのです。

私は、このように治療を組み立てる考え方を**「治療ポートフォリオ」**と呼んでいます。

診断し、治療を選び、その結果を確かめる。

必要であれば、次の治療を考える。

それは、目の前の患者さんの手に対して、今できる最も適切な治療を追求していくための考え方です。


治療すること自体が、目的ではありません

美容師さんなら、ハサミを使うこと。

料理人なら、包丁を握ること。

楽器を演奏する方なら、思いどおりに指を動かすこと。

そして、特別な仕事や趣味がなくても、日常生活の中で手を気兼ねなく使えること。

手の治療が目指しているのは、そうした時間を取り戻すことだと私は考えています。

そのために、まず状態を正しく見極め

必要な治療を選び

そして、治療後の変化を確かめる。

どれほど医療技術が進歩しても、この基本を大切にしたいと思います。

優れた技術を備え、それを生かす判断力を磨き続けること。

それが、私の考える手の専門医療です。


 
 
 

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